この記事では「転勤の多い勤務医生活から、地域に根付いた医療を行うために開業をしたいけれど、何をしたらいいのかわからない」とお考えの方に、クリニック開業までのスケジュールと事前準備について解説します。
近年、勤務医として経験を積んだ先生が「地域医療に貢献したい」「自分の知識や技術を活かして、より高い収入を得たい」と開業されるケースが増えています。しかし短絡的な開業をすると後悔することもあります。ここでは先生方が今後の見通しを立てられるよう流れをみていきましょう。
クリニックを開業するためには次のことを考える必要があります。
● どこで、どの年齢層に対して、どのような医療を行うかというコンセプト
● 資金調達
● 行政手続きや事前準備
これらには最低でも1年半から2年の準備期間が必要です。
クリニック開業のためには、まずどの年齢層に対して、どのような医療を施して地域や患者に貢献していくのかというコンセプト作りが必要です。このコンセプトが今後の指針ともなり、コンセプトを元に具体的な事業計画書を作成していきます。
事業計画書作成は、健全なクリニック経営のための重要な作業です。資金調達、開業時の支出、開業後の収支計画を事業計画としてまとめます。
この計画書は融資を受ける際の判断資料ともなりますので、想定されるリスク、自身の生活費も含めて余裕のある計画を立てましょう。
診療所の場所選びは、今後のクリニック経営に大きく関わる大切な事項です。生活動線や今後の人口、年齢層変化を想定していかなければなりません。
診療圏調査
診療場所選びの際には人口、年齢層、アクセス、競合医療機関、生活動線などを調べて診療圏調査を行います。この調査によって開業後の見込み外来患者数を把握し、将来を見すえた具体的事業計画を立てましょう。
設計・内装と医療機器選定
クリニック内は患者、従業員の動線や車椅子などのためのバリアフリーに配慮しなければなりません。電子機器も多いため、配線や水回り、トイレの位置なども業者と綿密に打ち合わせをしていきます。
また、このタイミングで電子カルテ導入についても検討します。操作性、採算性、アフターフォローの良さは、実務上の重要なポイントです。
クリニック開業には、少なくとも5千万円の資金が必要です。自己資金以外は金融機関からの融資を受けることになります。公的融資である日本政策金融公庫、信用保証協会融資制度、民間銀行などが利用可能です。
これらは開業資金として、設備資金と運転資金を融資するものであり、開業後に運転資金がショートしてから融資を受けることはできません。そのため融資を受けるためには地域医療に貢献するという理念とともに、綿密な分析にもとづく事業計画書が重視されます。
また、融資金が計画通り使われているかのチェックも厳しくされることも知っておきましょう。
開業時に必要な行政手続きには「診療所開設届」「社会保険医療機関指定申請」などがあります。開業場所や物件が決まったら、賃貸借契約を結ぶ前に保健所、厚生局、消防署などの行政機関に事前相談をしておきましょう。
診療所開設届
「診療所開設届」は開設後10日以内に管轄の保健所に提出しなければなりません。この届出が受理されてはじめて、診療行為を行うことができます。しかし、事前に保健所の立ち入り検査がある場合もあり、診療所条件を満たしていないと届出が受理されません。
そのため、開業場所が決まったらまず事前相談を受け、施設や建物の概要、クリニック名称についても情報共有しておきましょう。
社会保険医療機関指定申請書
診療所開設届が受理されたら、次に「社会保険医療機関申請書」を開業場所を管轄する厚生局に提出します。地域によっても指定開始日が大きく異なるため、事前相談で締切日を確認しましょう。
この申請が受理されなければ、健康保険を使うことができず、自由診療となります。開業日を変更するなど大きな損害につながりますので注意が必要です。
クリニック開業のためには、医師以外のスタッフ採用、広告宣伝、また開業リスクを分析して保険の見直しをする必要があります。
スタッフ採用、広告宣伝、医師会挨拶
クリニック運営には、医師以外に看護師、技師、受付事務員が必要です。ハローワーク、求人サイト、知り合いを利用して募集しましょう。開業日までに研修期間を設け、クリニックの理念や電子機器の操作を共有することで、スムーズな開業となります。
また、クリニックの認知度をあげるためにもホームページ、SNS、チラシのポスティングについても活用していきましょう。そのほか医師会に登録すると健康診断や予防接種といった自治体の業務の委託をうけられます。登録すると広告宣伝、収入アップにつながり、さまざまな情報も提供されるため、事前にご挨拶をしておきましょう。
保険見直し、税理士相談
開業のリスクを考えて、次のような保険についても検討する必要があります。
● 所得保障保険(就業できないリスク)
● 医師賠償責任保険(医療事故、訴訟リスク)
● 団体信用生命保険(事業失敗のリスク)
● 火災保険(災害のリスク)
このような保険や、クリニックの収支、税金面など金銭管理のためにも医療機関経営に詳しい税理士に相談するのがよいでしょう。
クリニックの開業スケジュールについてみてきました。クリニック経営が軌道にのるまでは数年はかかります。計画通りに行かない時にも、立ちもどれるコンセプト、事業計画書を練り上げていきましょう。
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